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Rambler's Top100
極東ロシア・オルカプロジェクト  
海洋のさまざまな生きものの中で、昔からシャチは特に知能が高く美しく、そして攻撃的だと考えられてきました。人々はシャチに、アザラシやクジラを襲う残忍な捕食者の悪評を与える一方、カリスマ性を持つこの美しい野獣の姿を水族館や自然界(飼育下よりはるかにすばらしい)で目のあたりにし魅せられます―― 一般の人々のみならず、シャチは研究者をも魅了します。
複雑な行動、高度に発展した社会、そして群れごとに個性的な「方言」を伴う音響生態を持つシャチは、研究対象として非常に興味深い対象種のひとつです。シャチは北極から南極まで広く分布しますが、ロシアでは唯一カムチャツカ州でのみシャチの調査研究が行なわれています。

わたしたちの調査計画はアレクサンドル・ブルディン(ロシア科学アカデミー、カムチャツカ生態系・自然管理研究所の動物研究室長)、エリック・ホイト(イルカ・クジラ保護協会専任研究員)、佐藤晴子(個人研究者)によって着手具体化されました。1999年、ブルディンと佐藤はシャチの写真、動画撮影と鳴音録音のために初めてアバチャ湾にボートを繰り出し、そのすべてで確かな成果を収めました。以来、わたしたちの活動は成長発展、新たな参加者たちを迎え、有意義な成果を上げています。
ロシアのシャチは今危機におかれています。日本の北部という地の利と、ロシア国内におけるシャチの保護政策欠如のため、近年日本をはじめ複数国の水族館飼育展示用個体の需要を満たす捕獲地として強い関心を集めています。アメリカとカナダの北西岸での研究の歴史に見るとおり、写真識別法(訳注:動物の外観の自然標識を撮影、観察、照合により、一頭一頭個体を識別して行く方法)実施以前のシャチの個体群の推定規模は、実施後確認された個体群の実際の規模よりはるかに過大(バンクーバー島周辺の例では3から5倍も過大)でした。この事実に加え、長期間にわたる社会的な群れ生活者であり、北太平洋東部全体の各個体群の規模が100頭以下から600頭に満たないというシャチの生物学的特性が、水族館での飼育展示用にシャチを捕獲する行為に対する強い反対意見の理由です。
けれども2001年以降毎年、ロシア国内でのシャチの捕獲許可枠が設定され、2003年9月には野生個体群からメス2頭が捕獲されました(1頭は捕獲用の網にからまり、もう1頭はウトリッシュ水族館/Utrish Dolphinarium搬入13日後に死亡)。

 ロシア極東のシャチの個体群について理解を深めるためになすべきことは、まだ山ほどあります。わたしたちの調査計画がシャチを捕獲の危機から救うことに役立てたい――これがわたしたちの願いです。
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